第5回:伊勢市周辺の埋蔵金・秘宝伝説

 埋蔵金を探すには、歴史上の確かな情報(古文書、秘宝マップ等)が無ければ、ただ怪しいと言うだけの場所をやみくもに掘っても、お宝は出るはずが無い。地域に伝わる古来の伝承や黄金伝説には眉唾ものも少なくない。庶民にとっての確かな情報源となると、まず、埋蔵金・秘宝に関する研究者の書いた書物であろう。日本の各地に関するこの種の本は、これまでにかなり出版されている。

 

 さて、伊勢市の近辺はどうであろうか。全国的に著名な資料も文献もなさそうである。と言うのも、伊勢市は市域の約四4分の1が神聖な伊勢神宮の宮域であり、殺戮と国領のぶんどり合戦を演じた戦国の内乱とは無縁であったことにもよるのであろうか。しかし、海賊(水軍)の根城であった鳥羽・志摩地方となると事情が違うし、又、豪商の栄えた城下町である松阪市や、財を蓄えた庄屋の屋敷跡のある多気郡、度会郡においては、未発掘の埋蔵金の存在が、多くの書物に記され紹介されている。

 

 ところで、秘宝はどういった場所に隠されているのであろうか。古墳の副葬品を除けば、戦乱の世の隠匿金か戦利品であろう。又、平家伝説にまつわる隠里ならば、当時の武具や煌びやかな宝物の数々であったであろう。伊勢市には「平家谷」と呼ばれる隠里があり、その横輪町や矢持町には平家の血筋を引いた子孫が住み、今も秘宝を護っているとさえ言われている。多くの隠里は山間の狭小な山里であり、周囲は巌の聳える険しい山々であり、昭和の初期までは、正に陸の孤島であった。在所には棚田や段々畑があり、野面積みの石垣や風よけの石塀があり、人々は農・林業を営みながら、ひっそりと暮らしていた。隠す場所はいくらでもある。一般には、秘匿場所は土中であり、神社仏閣、墳墓、謂れ石や巨木、石垣や井戸、洞窟、池の底、竹林などである。戦国時代の難破船があれば、海底や海岸も考えられる。

 

 但し、ガリンペイロ(南米の山師・宝石採り)になるには、絶対に地域や他人に迷惑をかけてはならない。人知れず密かにストーン・ハンター(鉱物採り)のように山野を駆け巡り、自分の信念に基づく行動が必要である。そして、怪しい場所を独自の研究によって割り出すのである。例えば地図に無い「金」の付く地名の発見もその一つであろう。風水害の後など、古銭がよく見つかる場所をチェックしておくのもよい。昨今は、ハンディで高感度な金属探知機の国産品が、簡単に手に入るようになった。海水浴場の砂地でシーズン・オフにテストをした後、必需品として携行すればよい。後は、埋蔵物の取得に関する法律のある事を念頭において、黄金ロマンを求めるがよい。

 

 最後に、書物や文献に見られる伊勢市、及びその周辺の埋蔵金、秘宝伝説のある場所を紹介しよう。

  1. 伊勢市朝熊山〜山上に弘法大師中興の金剛証寺があり、周囲の経塚群などからの出土品もあり、昔から黄金伝説は絶えない。
  2. 伊勢市矢持町・横輪町〜霊峰・鷲嶺(袴腰山)の観音像や、覆盆子洞など複数の格好の鍾乳洞があり、平家伝説とともに、数々の秘宝が隠されていると言われている。
  3. 志摩市阿児町〜阿児の埋蔵金がある。
  4. 志摩市磯部町〜磯部町には、長者屋敷の埋蔵金と的矢美作守の埋蔵金がある。
  5. 多気郡明和町〜ある大名主の屋敷跡の埋蔵金が著名で、未だ見つかっていない。

 

(2010年2月21日 記す)

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