1. 定 義
一般には、無機化学成分(鉱物質)を多量に含む通常水(淡水・真水)以外の湧泉の内、加熱しなければ入浴に適さないものを「鉱泉」と呼び、そのままか、あるいは冷水を混じて入浴する高温の湧水を「温泉」と称しているが、温泉法では、下表の温度と物質量を含有するものを「温泉」と定義づけている。
2. 温泉の分類
- 湧出状態による分類
自然湧水、鑿井泉、吹上泉、間歇泉、温泉ガス
- 医学的分類
温 度 冷鉱泉 25℃未満 微温泉 24℃〜35℃未満 温泉 32℃〜44℃未満 高温泉 42℃以上 水素イオン濃度 強酸性泉 pH 2未満 酸 性 泉 pH 2〜4 未満 弱酸性泉 pH 4〜6未満 中 性 泉 pH 6〜7.5未満 弱アルカリ性泉 pH 7.5〜8.5未満 アルカリ性泉 pH 8.5〜10 未満 強アルカリ性泉 pH10以上
以上のほかに、浸透圧による分類、緊張度による分類、化学組成による分類、効能による分類等がある。
この他、学術上(地球科学・地質学的見地)からは、次のような分類が成されている。- 地球科学的分類
温泉は、地下深部から上昇する熱水と、地下浅所に帯水する地下水とが混合して湧出する場合が多い。
- 熱水型温泉
地下のマグマの成分から分離、又は分泌された熱水が上昇し、主成分となって地表に湧出したもの- 地下水型温泉
地下水が地下の岩石を伝わる地熱によって加熱され、昇温した結果温泉化したもの。- 海水型温泉
地下深部から上昇する熱水が、海水に混入して温泉となったもの。- 化石水型温泉
海水が地質時代に地層中に閉じ込められた「化石水」に、熱水が混入したもの。
油田やガス田に見ら れる温泉に多い。- 地質学的分類
- 裂 罅 泉
岩石中の不規則な裂罅を満たし、かつ、この裂罅を通って地表に湧出する温泉。温泉の基本型。- 層 状 泉
温泉が堆積岩(堆積物)中の含水部分に帯水し、通常の地下水と同じように、水平的な広がりを持って存在するもの。- 貯 留 泉
温泉が不透水層の介在によって、堆積岩(堆積物)中の含水部分、あるいは基盤岩層ないし貫入火成岩体中の裂罅を満たし、不透水層の下に貯水されているような状態を示す場合を指す。この例はあまりない。
3. 温泉の熱源
- 第四紀の活火山の熱エネルギー
- 第四紀の活火帯の熱エネルギー
- 第三紀火山岩類の余熱
- 第三紀グリーンタフ(緑色凝灰岩)地域の残留熱
- 火成岩体、及び火成鉱床の残留熱。
- 第三紀層の厚層の底の地熱(自然昇温熱)
- 地熱地帯の熱エネルギー
4. 温泉地の地域性
- 第四紀の火山地帯、及びその周辺
- 第三紀の火山岩体の分布する地域、及びその周辺
- 第三紀グリーンタフ地域
- 厚い第三紀層の分布する地域(厚層底まで掘鑿するケース)
- その他(地熱地帯、金属鉱山、炭鉱、海底温泉、洞穴内温泉 他)
5. 温泉の徴候
温泉は、自然に湧出するほどの水圧を持っているので、温泉が地下に潜んでいるような場所では、その一部が地表に漏れて温泉徴候を示すことが少なくない。一例を示すと、
- 湧出する地下水の水温が、年間を通して、他所の水温より高いこと。
- 臭気のある水や、口に含むと刺激を感じる水が湧いていること。
- 湧水孔に鉱物質の沈着が著しいこと。
- 火山地帯や地熱地帯で、植生が周囲と著しく異なる場所であること。
- 熱水性金属鉱山の近くであること。
- 積雪地帯では、周囲に比べ著しく融雪が早く、積雪量も周囲より異常に少ないこと。
- 河川の水温が年間を通して周囲の流水より高く、生ぬるい水となっていること。
6. 地下の昇温と温泉
地球は、内部に行くに従い、高温になっているが、地殻部分においても、地下深所に行く程昇温することが知られている。仮に、地下増温率 3℃/ 100m、恒温帯の地上温度(気温)が15℃の場所で、地下1000mの温度を概算すると、約45℃、2000mでは約75℃となる。この地下に流動しない地下水が存在するなら、地下水自体もそれぞれ約45℃、75℃に近い水温となっているはずである。
ボーリングなどの手段で、この地下水を採り出すなら、導管内の温度降下を15℃〜20℃と見ても、それぞれ30℃、並びに55℃の水温で揚水され、温泉法をクリアする立派な温泉になる。このように純粋の地下水でも温泉になる可能性を持つが、問題は1000m、あるいは2000mの地下に汲み上げても枯れることのない程、豊富に「深層水」が存在するかどうかである。地下の温度の方は深く掘れば掘る程高まって行くが、肝腎の「水」が充分なければ温泉は湧き出さない。
鳥羽・志摩地方には、特に沿岸部に分布する中生代等の分厚い地層を1000m以上掘鑿し、塩水化した高温の深層地下水(深所ゆえ他の化学成分も若干溶存する)を汲み上げた、「深層水温泉」が次々にオープンしているが、普通の海水も濃縮して沸かせば温泉とみなすことができる。
(原文:2001年作成、2010年3月3日 一部加筆・修正)